コラム8
海外の話〜ドイツ編〜 
2014年7月27日作成

 僕は海外を旅するのが好きです。

 その国の人、暮らし、習慣、文化、食などに触れることは新鮮な経験です。そしてそれは日本での常識を改めて見つめ直す良い機会を与えてくれます。「日本の常識は世界の非常識」と言われますが、海外での経験は日本の常識がどうして、どうやってできあがって来たのかを考えるヒントにもなります。海外に行けばいくほど、日本の良い所も理解でき、日本が好きになれるような気もします。

 今回は備忘録も兼ねて、ドイツでの経験や感じたことをつらつらと書いてみます。なお、この文章は主に長期出張を含めて6回滞在したチューリンゲン(Thueringen)州イルメナウ(Ilmenau)での経験を基にしています。


・残業をしない
 ドイツで最初に感じるのはこれ。大学では教職員も学生もほぼ夕方5時には帰ります。ドイツでは「夕食を家族や友人と取る」ことが当然であり、それは仕事よりも確実に優先される事項のようです。夕方6時にはすでに大学はひっそりと静まりかえっていました。
 イルメナウ工科大学の教授は忙しい時は、夕食に間に合うように帰れるように早朝出勤していました。僕も一度、朝4時から実験をやり始めたことがあります。
 このドイツの習慣は素晴らしいと思いますが…日本では根付かないでしょうね。講義は早いものは7時からやっていましたし。個人的には目指したい生活です。

・長期休暇をしっかり取る
 同上。休暇中は仕事の連絡が一切取れません。

・電車は正確…ではない
 経験してみてびっくりですが、電車がかなりの頻度で遅れます。新幹線に相当するドイツバーン(Deutsche Bahn)のICE(Inter City Express)には30回以上乗りましたが、時刻通り発着したのは5回程度です。切符には「予定より15分程度長くかかることもあるよ」とか書いてあります。ICEが遅れても、乗り継ぎ先のローカル線がICEを待たずに出発していたりするから、余計腹が立ちます。
 これにも少しだけ理由があって、ドイツではICEもローカル線と線路を共有しています。このためにどこかの路線で電車の運行が狂うと、たちまちその地方全体の電車の遅延につながるわけです。そして僕がよく利用した路線(ゲーテ街道沿い)は過密運行気味で、他の地域ではそこまで遅延しないという話でした。
 それにしてももう少し正確に運行してもらいたいものです。ちなみに線路はもちろん標準軌。

・電車より車の方が早い
 さすがはアウトバーンを要するドイツ。車での移動が電車より早いです。ポツダムからイルメナウに移動したときは、電車だと4時間半以上かかる所を、車では3時間で移動できました。200キロ以上でアウトバーンをぶっ飛ばすのは、慣れるまではとても怖い。
 アウトバーンもトンネル等では80キロ制限。200キロでぶっ飛ばしていると、80キロが止まって感じます。トラック等はどこでも80キロ制限で一番右の車線を走らなくてはいけないようで、相対速度100キロ以上でトラックを抜き去るのも、慣れるまでは恐怖。トンネル明けなどで、速度無制限を示す標識を過ぎると車が一斉に加速していく様は、まるでレースをしているよう。

・ビールは地ビール
 日本のようにビールは大手4社でほぼ10割のシェアみたいなことはなくて、地ビールのシェアがかなり大きいです(もちろんBitburgerのような大手も存在しますが)。どこのレストランでもいろんなビールを選べます。
 これはなんでも「ビールは〇キロ以内で生産されたものを供給しなければならない」という法律が昔からあったそうで、そういう歴史の産物です。人口わずか25,000人のIlmenauにもビール醸造所があります。
 そしてどの街に行っても地ビールがことごとく美味しいのが素晴らしい。

・黒ビールはポピュラーではない
 なんとなくドイツは黒ビールというイメージがありましたが、メインはピルスナー。

・赤よりも白ワインがメイン
 飲まれるワインは主に白。赤ワインはお祝いごとの機会とかに主に飲まれるそうです。これはドイツが寒冷地のため、赤ワイン用のぶどうがなかなか取れないことに起因するようです。料理にじゃがいもが多いのも、ソーセージやサラミやチーズがよく食べられるのもこういった地理的要因に関係しています。寒いドイツにいると、それを肌で実感することができます。

・酒が安い
 スーパーに行くとワインは1瓶10ユーロ以下。一番安いのは2ユーロ。僕の感覚では日本の半額以下。輸入ワインもほぼ同額。酒税が安いとは聞いていましたが、それを差し引いても酒類の安さは異常。このからくりはなんなのか…。

・ソーセージに誇りがある
 ドイツと言えばWurst(ソーセージ)。地方ごとに独自のソーセージがあって、食べ比べるのも楽しいです。Ilmenauは、チューリンゲン県の街で、有名なThueringer Wurstが食べられます。
 一度ニュルンベルクに小旅行に行ったときに、これも有名なNurnberger Wurst(小さくて白い感じ)を食べました。大学で学生に「ニュルンベルクに行ったけど、こっち(Thueringer Wurst)の方がおいしい」と言ったら、みんな「そうだろう」と言う感じで盛り上がりました。が、1人いたニュルンベルク出身の学生は「いや、ニュルンベルクのソーセージはドイツ1だ!」と強固に主張していました。

・ハイキングが盛ん
 みんな自分の登山用のストック?を持っていて、休みには近くの山をひたすら歩きに行きます。子供も小さい時から山歩きを盛んにやっています。これはこれだけ周りになだらかな山があるのを見れば、納得できます。

・地方に住みたがる
 自然に囲まれた小都市の人気が高いようで、大都市圏の人口はどんどん減っているようです。これもドイツにいると何となくわかります。うまく説明できませんが…。

・技術者の社会的地位が高い
 さすがマイスターの国。技術者や職人の地位が高い印象を受けます。大学でも工学部は人気。女性も多いです。

・博士課程学生が多い
 大学では博士課程に進学する学生が非常に多く、研究をやっているのは博士の学生ばかりです。そのせいか、こちらからすると「え?この人博士課程の学生なの?」と思うような学生に会うこともちらほら。博士課程進学率が高いため、修士卒よりも博士卒の方が人数が多い。

・ゲーテが大好き
 Ilmenauはいわゆるゲーテ街道の真ん中にあり、Ilmenauも周辺のどの街にもゲーテに関する資料館やらゲーテ像やらゲーテが立ち寄った〇〇みたいな観光施設があります。ゲーテは僕はファウストのあらすじ程度しか知りませんが、どうもドイツ人には絶大な人気があるようです。
 ゲーテは国中を旅して回った文豪ということで、日本で言うと松尾芭蕉みたいな感じでしょうか?違うか。

・ナポレオンに恨みがある?
 出かけた時に、「この街はいついつナポレオンに占領された」とか「ナポレオンはあっちから攻めてきた」とかいう説明を受けることが何度かありました…聞いてもいないのに。日本人には少々わかり辛いのですが、ドイツ人にとってはナポレオンによる侵略は非常に重要な出来事であったのだろうと推測できます。

・オフィスは小部屋
 大学や研究室のオフィスはせいぜい2-3人の小部屋。日本の大学研究室のような20人も入るオフィスは見たことがありません。聞けば企業のオフィスもそんな感じとのこと。労働環境としては良いかもしれません。

・コート掛け
 各部屋の入り口にはコート掛けが完備。しかもハンガーとかではなく、上着の内側の首のところを引っかける方式なので、上着が痛むんじゃないかなと思ったり思わなかったり。


 他にもいろいろあるような気もしますが、気ままに追記します。それにしてもドイツは良いところです。





Ilmenauのグローセル池のほとりより、Kickelhahnを望む




Ilmenauの街並み




Weimarのたまねぎ祭り


 次はアメリカ編など書いてみようかな…気が向いたら。