コラム1
学生へのメッセージ

 大学に入った時には、ほとんどの人が多かれ少なかれ「これを勉強したい!」とか、あるいは具体的な目標がなくても「がんばろう!」といった気持ちを持っていると思います。ところが大学生活の中でこの初心を忘れて行ってしまう学生がいるのを目にします。

 これは、学生が自らの好奇心によって勉強する姿勢を身に着けることができない人が多いからだと思います。このような、興味を持って自発的に問題に取り組んでいく姿勢を身に着けることは大学生にとって最も重要なものです。

 私は「自発的に考える力」は訓練をすることによって誰でも身に着けることができる力だと考えています。その力を身に付けるための近道は、自分で考えることの楽しさを知ることだと思います。この楽しさを見つけることは、学生生活におけるモチベーションの維持にもっとも役に立つでしょう。

 偉そうに書きましたが、私が最も言いたいことは、講義でも勉強でも研究でも、遊び心を持ってやることが大事だということです。「学問を遊ぶ」のです。これは多少のコツがいりますが、決して難しいことではありません。

 講義を受けているとき、「なんで講師はあんなに難しいことをちゃんと理解できているんだ?」と思うことがありませんか?それは講師はその事柄を「自分の言葉で」理解しているからです。「自分の言葉で理解する」とは、多少間違っていてもいいから、自分なりに納得する説明を見つけることです。そしてこを見つけることこそが学問の楽しみ方に他なりません。

 講義を受けている時や、難解な教科書を読んでいるときも、自分なりの説明を探しましょう。「こう考えると、このことはちゃんと説明がつく」「この説明はこっちの事柄にも適応できる!これはいい説明だ!」…自分なりの仮説を立て、それがあっているかどうかを確かめる、自分なりの工夫と試行錯誤の繰り返しです。これは特別に難しいことではなく、遊んでいるのと全く同じです。

 人はいろいろ工夫して、それがうまく行くことに楽しみを覚えます。小さい子が遊ぶ時にだって、その子なりの工夫と試行錯誤をしているでしょう。新しい遊びを考えたり、おもちゃを使って遊んだり、ゲームをしている時だって。

 研究室に配属されてからも同じです。研究において困難にぶつかり、それを解決するために工夫と試行錯誤を繰り返す。それがうまくいった時の充実感は何にも代えがたいでしょう。工夫と試行錯誤と最高の達成感。これに勝る「遊び」はないでしょう。大学における学問には、受験勉強などと違った自由があります。

 学問を遊ぼう。